2013年9月15日 (日)

ストーリーの外にあるもの

永山です。

以前、みやざき◎まあるい劇場の活動のことを書いた原稿があります。


「生きるための試行 エイブル・アートの実験」(フィルムアート社)

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よかったらご一読ください。


   ストーリーの外にあるもの
                  永山智行

 相変わらず今日もこの国では「泣ける○○」だの、「笑える○○」だのの文字があちこちに躍っている。テレビの中で、週刊誌の見出しで、新聞広告で………。

 そんなに泣きたいのだろうか、と底意地の悪い私は思う。「泣ける○○」という言葉には、「さ、今日は、仕事も早く終わりそうだし、久しぶりに涙でも流してみっか」というような、「ストレス発散」的精神性が働いているようで、どうにも気持ちが悪い。勿論、このことは恐らく今に限った傾向ではないのかもしれない。それでもやはり私には、現代の「感動」が、どこか身体性を欠いているような気がする。それは画面の向こうの、自分とはまったく関係ない話で、だからこそ、いくらでも「泣ける」し、ま、泣けない時は、次のDVDを見ればいいのだ。コンビニの商品棚に並んでいるような清潔な「感動」。

 演劇という表現の強靭さ、乱暴さの本質は、そんな清潔な「感動」の中にはない、と信じている。観客の眼前に並ぶ、編集されていない生の人間たちは、どこまでも具体的な存在で、あくまでも等身大である。喜・怒・哀・楽なんていう記号的な感情は、カメラによって、あるいは監督によって編集される清潔な映像の中では、ストーリーに奉仕するためにも必要なのかもしれない。けれど、演劇の場において記号的な感情は、無効であると私は考えている。

 「痛み、怖れ、ためらい、はじらい、おののきの基本要素がなければ、詩は生まれない」

 敬慕する太田省吾の評論の中で知ったリルケの言葉である。太田省吾は「詩」を「演劇」と読み替え、さらにこう続けている。

 「このリルケの言葉は、喜怒哀楽を除外しているところを注目しなければならない。」(「仕事の周辺」太田省吾『舞台の水』)

 2006年秋、私は演劇作品づくりのためのワークショップをはじめた。エイブルアート・オンステージ、「障害のある人たちが参加する、新しい舞台芸術の創造」。事業募集の企画書にはそう書いてある。勿論、作品づくりには少し長いプロローグがあり、2001年から私と私の劇団は、宮崎市内の福祉作業所・アートステーションどんこやと何度も体験型のワークショップを重ねてきた。そうして2007年2月にはじめて共同で演劇作品を制作し、上演することは決まっていたのである。が…。実は2006年秋にワークショップをはじめた時点で、私はまだどんな作品を上演すべきか、決めあぐねていた。

 それでもとにかくワークショップははじまった。その日起きたことを書こう。

 落ち込んでいる友達をなぐさめる、という課題を参加者のみなさんにやってもらった。筋ジストロフィーの平野今朝市さんは、相手になかなか近づこうとせず、しばらく逡巡するようにぐるぐると友達の周りを車椅子で回っていた。やがて意を決したのか、相手に近づくと、その弱々しい手を精一杯伸ばし、相手の手をただ黙って強く握りしめた。

 私は、新鮮な発見の驚きの中にいた。人は、そうだ、このようにして、今、ここに存在するのだ。「ためらい、はじらい、おののき」ながら生きている。忘れかけていた、見えなくなっていたそんなことを教えてもらった気がする。

 私は覚悟を決めた。この作品を決して「障害者のみなさんが頑張りました」というような作品にはしないということ、そのために私たちが普段やっているとおりの稽古をみっちり行うということ。そして、「障害」とやらを、ひとまずストーリーの外に置くこと。つまり、障害者が障害者の役を演じるということをしない、ということである。

 ストーリー、とは何か。それは小説や映画や種々のおはなしを構成するものであると同時に、私たちが日々でくわす眼前の事象をまとめ、整理し、片付けるための道具でもある。「あの人は、こういうことが原因で、こうなって、こんなことをした」「この出来事はこういう理由ではじまり、こんな過程を経て、こうなった」という具合に。私たちがストーリーで日々の事象を理解するのは、まるで見終わったDVDのように、それらの事象を棚に片付けやすくするためでもある。けれど、映画監督W・ヴェンダースが「ストーリーは嘘をつく」と自ら看破したように、ストーリー化とはつまり要約と概念化であり、そこには例えば、多くの切り捨てられた感情がある。喜・怒・哀・楽、とカテゴライズされえぬ、名づけることのできない、言葉にならない思い。

 私が「障害」をストーリーの外に置いたのは、それを「喜怒哀楽」「起承転結」といったカテゴリーで要約されることから逃れ、ただそこにそのまま厳然としてあるものとして描きたかったからである。障害者の出演するお芝居ということで、恐らくそう少なくない方が、私たちの作品を、「泣ける○○」と同じ態度で見始めたのではないかと思う。が、誰ひとりとして「私たちは障害を持っていますが精一杯生きています!」なんてことを語る人間は出てこない。ただ、そこに生きている。それだけである。そこには障害者であるかそうでないか、男であるか女であるか、子どもであるか大人であるか……、そのようなカテゴリーは一切関係ない。

 上演作品『隣の町』を見終わった多くの方から「なんだかわからない」という感想をいただいたことは私にとっては成功だった。「なんだかわからないけど、涙が出た」「なんだかわからないけど、不思議な気持ちになった」……、そうなのだ、「なんだかわからない」のが、私たちの中にある感情なのだ、と。あなたの中に、私の中に、二人の間に、「なんだかわからない」ものがある、ただ厳然としてある。それにストーリーの枠をはめず、それでもそのまま受け入れる。確かに厄介で困難なことである。けれど極度にデジタル化した現代において、その困難の向こうに、もういちど新しい社会のありようが見える気がするのだ。

2012年6月20日 (水)

永山智行3作品連続東京公演。

こんにちは。
劇団こふく劇場の永山智行です。
いつも劇場に足をお運びくださりありがとうございます。

さて、今年、2012年、なぜだか拙作が3作品連続の東京公演をすることになりました。
まあ、もう二度とないことだと思いますので、興味のある方はぜひ3作品とも、いや2作品でも、せめて1作品でも観ていただきたくご案内をさせていただきました。

こんな感じです。

6月
14+『土地/戯曲』(作・永山智行 演出・中嶋さと)
22日・23日・24日 アトリエセンティオ

 →新作書き下ろしです。昨年、鳥の演劇祭で上演した『土地/自傳』の姉妹編です。
  演出が面白いです。俳優も素敵です。

7月
rawworks『prayer/s』(作・演出・永山智行)
7日・8日 SPACE雑遊

 →ちょっと実験的な作品です。九州の俳優たちでつくっています。

10月
劇団こふく劇場『水をめぐる2/水をめぐる3』(作・演出・永山智行)
11日・12日・13日・14日・15日 こまばアゴラ劇場

 →劇団公演です。力が入ります。再演と新作の連続上演です。

早速今週の14+公演からはじまりますが、どうぞ10月のこふく劇場公演までよろしくお願いいたします。

永山智行

2010年5月17日 (月)

チケットってどうやって買うの?

演出の永山です。
先週金曜日より、いよいよ金曜劇場スタートしました。

ちなみにこふく劇場の本番は水曜日です。お間違いなく。

本番も近づいてきましたので、チケットのご案内をしておきたいと思います。

チケットを手に入れる方法はいくつかあります。

①お近くのローソンで買う。
  コンビニのローソンに入るとLoppiという端末が置いてあります。
  それにうちの公演のLコード「89832」を入力していただけると、
  簡単にお買い求めいただけます。

②ウエルネス交流プラザで買う。
  交流プラザに直接行っていただいて買うこともできます。

③劇団員から買う。
  もしうちの劇団員のお知り合いがいらっしゃる方は、各劇団員から
  もお買い求めいただけます。

④予約をする。
  事前にご連絡をいただければ、ご予約を承り、当日現金との引き
  換えでチケットをお買い求めいただけます。
  (前売料金になります!)
  予約の方法もいくつか。

  ・予約フォーム こちらに必要事項をご記入いただければ予約
    完了です。  

  ・お電話 0986-26-6422(劇団こふく劇場)
   ※不在の場合が多いので、その際は、お名前、日時、枚数
     (おとなかこどもかも)、連絡先を留守電に残しておいて
     いただければ大丈夫です。

  ・メール こちらに上記と同じ内容のメールを送ってもらっても予約
    できます。


今回の作品は、交流プラザの舞台上に客席まで組んでしまう、いわ
ゆる「舞台上舞台」というもので、小劇場スタイルのため客席数も約
90席ほどになります。

そういうわけで客席に限りがありますので、チケットのお求めはお早めに。

お待ちしています!

2009年11月 8日 (日)

福岡公演ゲスト出演者決定!

みやざき◎まあるい劇場「青空」福岡公演のゲスト出演者が決まりました。

元グレコローマンスタイルの川口大介さんです。

以前、ワークショップでご一緒させていただいたのですが、とても魅力的な俳優さんです。

どうぞお楽しみに!

永山

2009年7月 7日 (火)

動画できました

「勝負の終わり」の予告動画ができました。
稽古場の空気感、気になる台詞・・・
ぜひ会場で生で感じてください。

2009年2月18日 (水)

公演情報/「昏睡」、今夏、上演。

2005年2月に創作ネットワーク委員会+Ort-d.dプロデュースとして上演された『昏睡』(作・永山智行)が、今夏、青年団の山内健司さんと兵藤公美さんの二人芝居として上演されることになりました。
どうぞお楽しみに。
いや、私がいちばん楽しみですが・・・。

永山智行

詳細はコチラ

2008年10月24日 (金)

『小林三姉妹』出演者紹介その3

出演者紹介、いよいよ最後の二人です。
榎薗家の大事なお父さんと娘です。

榎薗清吉(父)=山室曹俉
Sougo
「涙と笑いの感動の物語」まあ観に来てください。
命の尊さを皆で考えようじゃぁありませんか。


榎薗めぐみ(長女)=大浦愛
Ooura
『小林三姉妹』に出会えてよかったと
心から思います。
観客の皆さまも、きっと同じ気持ちに
なっていただけるのでは。。。
一緒に楽しい時間を過ごしましょう!


詳しい公演情報はコチラ

2008年10月22日 (水)

『小林三姉妹』出演者紹介その2

ただいま、快調に稽古中です。
出演者紹介、つづけます。
今回は「タロのパン」の榎薗家をとりまく、おかしな人々です。

鍋貞夫=濱砂崇浩
Hamasuna
パンは、
おいしいよね。


中之森ヒトシ=鬼束雄人
Onitsuka
初演の「小林三姉妹」は客席で見ていました。
僕にとっては、とっても思い出深い作品です。
今回観てくださる皆様にとっても、そんな作品でありますように…


徳川マリ子=中窪由唯
Yui
初演の時は、ビデオ係でした。
まさかこの役を自分がやるなんて知るよしもなく、ビデオ係をしてました。
人生何が起こるか分からないものですね。
衝撃の感動をあなたに。
どうぞ。


クリーニング屋のヨシ=中村大介
Nakamura
かえってまいりました、「小林三姉妹」。
いいよぉ~、すごくいいよぉ~。
コバヤシの三丁目の夕日
めざしてがんばります。
あと、アコーディオンも…。


ひろ子(ヨシの妹)=中嶋友紀
Nakashima
はじめましてのかたも
おひさしぶりのかたも
タロにあいにきて
くださいね。

詳しい公演情報はコチラ

2008年10月20日 (月)

『小林三姉妹』出演者紹介その1

いよいよ再演がはじまります『小林三姉妹』。
その出演者を紹介します。

榎薗ハツエ(母)=神水流じん子
Jinko
ようこそ、榎薗家へ。
決して賢くはないけれど、
愛情あふれるあったかい家族の姿が
ここにあります。
’08.oct.20
じん子

榎薗あかね(次女)=あべゆう
Abe
わたくし、今回妊婦です。はっはっは。
戦後を精一杯生きるあたたかい人々に
会いにきてください。


榎薗たまみ(三女)=仮屋美千子
Kariya
今日の晩ごはん、
家族みんなで食べたいなと
思える物語です。


榎薗かおり(四女)=上元千春
Kamimoto
昭和30年代を知らない人も、
「なつかしいなあ…」と
思ってもらえるかも。
ポカポカします。
観てください。

詳しい公演情報はコチラ

2008年5月27日 (火)

戯曲講座「せりふ書いてみる?」受講生募集

毎年恒例の戯曲講座「せりふ書いてみる?」が今年も、三股、門川、宮崎で開講されます。

募集人数各会場 5名程度 ※応募者多数の場合は抽選となります。
県内在住の高校生以上の方(経験・年齢は問いません)、演劇経験不問。
原則として全日程に参加できる方と致します。

◎講 師
  永山智行
◎参加料
  一般 5,000円 高~大学生 2,500円(全12回分)
◎申し込み方法
 所定の用紙に事項を記入して各会場まで、ファックス、Eメール、郵送にて送付、
 直接劇場へ持参のいずれかの方法でお申し込み下さい。

《宮崎県立芸術劇場》 TEL:0985-28-3208
 FAX:0985-24-7676 E-mail:gekijo@miyazaki-ac.jp
《三股町立文化会館》 TEL:0986-51-3462
《門川町総合文化会館》 TEL:0982-63-0002

■ 期間: 平成20年7月から平成21年2月まで(計12回)
■ 会場: 宮崎県立芸術劇場・三股町立文化会館・門川町総合文化会館
■ 時間: 19:00~21:30(宮崎)
      ※三股・門川会場は、受講生全員の都合に合わせてスケジュールを組みます。
■ 講座内容
 ①「せりふ」って何?
 ②話す言葉を書こう
 ③会話を書こう
 ④材料を集めスケッチを書こう
 ⑤俳優に読んでもらおう①
 ⑥構成を考えよう
 ⑦最初のシーンを書こう
 ⑧2番目のシーンを書こう
 ⑨もう一度構成を考えよう
 ⑩3番目のシーンを書こう
 ⑪ラストシーンを書こう
 ⑫脱稿!俳優に読んでもらおう②

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